挑戦する対象について
人は失敗をおそれる。
だけど私は特に躁状態のとき、無鉄砲で向こう見ずに新しい挑戦に飛び込んでいく。
私は実際に挑戦することが好きだし、生来そんな性格だと母から聞いているから、病に関係なくそういう性格だとも思う。
けれど、失敗は恐る。その辺は、人並みだ。
私はほんの数時間前に、自分の挑戦の対象の認識が誤っていたことに気がついた。
挑戦の対象は国家試験。
超難関資格なので、挑戦するにはふさわしい。
だけど失敗をおそれていない。
そのことに気がついた。
なぜかって、その答えは簡単なんだ。
私の挑戦の対象は、国家試験じゃない。
失敗を恐れていないのは、国家試験への挑戦が、本当の挑戦の隠みのだったから。
そうして私はようやく、自分を誤魔化していたことに気がついた。
逆説的に考えてみれば簡単にわかることだった。
失敗を恐れているものこそ、挑戦していることなんだ。
私が恐れているものは、資格試験の不合格でもなく、子供を授かれるかどうかでもなく、新婚旅行に無事に行けるかどうかでもない。
私は、この病を寛解できるかどうかを恐れている。
だから急ぐ。怖いから急ぐ。
他の対象で気を紛らわそうとする。
でも人間が想像する失敗のほとんどは、実現しないらしい。
だからきっと大丈夫。
この病気に向き合っていけば、大丈夫。
緩やかな坂道を少しずつ登って行こう。